ポストコロナの次なる社会に向けた最大の課題の一つがデジタルトランスフォーメーション(DX)であることは言を俟たないところですが、デジタル社会の根底に位置づけられるものが、正確な認証基盤です。これが確実なものであってこそ、デジタル革命が社会全般に行き渡り、利便性と付加価値の高い世の中が実現することになると考えられます。
わが国では2021年の通常国会でデジタル改革関連法が成立し、デジタル庁の設置とともに、スマートフォンへのマイナンバーカード機能が実装されることが決まりました。これにより、2022年度末までには、公的個人認証機能サービスによる本人確認がスマホで行えるようになり、社会全般にわたる利便性が飛躍的に向上することになります。
このことを可能にしたのが情報セキュリティ大学院大学の大塚玲教授と同大学の辻秀典客員教授(いずれも現在、当コンソーシアム理事を兼務)が開発した技術であり、私が両先生とともに政府与党の関係要路に対して行った提案を契機に、2020年中から総務省の検討会で議論が進められ、その実現に向けて所要の法改正と予算措置が講じられることになったものです。
これを受け、公的個人認証機能の活用を、民間各界の協働によって、わが国の経済社会全般に普及させるべく、私どもが2021年5月に設立したのが「一般社団法人デジタルアイデンティティ推進コンソーシアム」です。すでに、総務省、デジタル庁に加え、与党とも連携関係を構築しつつ、関係諸方面と今後の進め方などについて検討を開始しています。
わが国でマイナンバー制度として2016年から導入された個人番号制度は、社会保険、税、災害対策の3分野から開始され、今後、その対象分野が拡大していく流れにあります。当コンソーシアムは、まずは、政府とも連携しながら、主として民間側でのマイナンバーカード機能のユースケース拡大に寄与していくという役割を担うことになりました。
デジタル庁発足時には、本機能がeガバメントを前進させていく事例として、スマホを通じたプッシュ型行政サービスの実現が話題になったところです。民間側においても、国民生活や企業活動などに関わる様々なサービスの効率的な提供、その利便性の向上に向けたイノベーションを進めていく上では、信頼度の高い認証基盤が不可欠の要素となるでしょう。その上で、信頼性のみならず、汎用性や安全性、あるいは将来において展望され得る国全体としての共通基盤との接続性なども考慮すれば、公的個人認証の本人確認や署名等の機能の活用こそが最善の道になるものと考えられます。
そのために、当コンソーシアムとしては、民間各業界や各企業、関係諸機関に幅広くご参画いただき、政府とも連携しながら所要の施策の実現を図ることを通じて、わが国のデジタル社会基盤の形成に向けて、そして、わが国が世界のデジタル革命を先導するポジションを築くために、ともに知恵を出し合い、力を合わせていきたいと考えております。
2022年の年明けに予定しているシンポジウムをもって、当コンソーシアムの会員制も本格的にスタートすることとなります。多くの方々のご参画をお待ちしております。