デジタルアイデンティ推進コンソーシアム代表理事 辻秀典 挨拶
ご挨拶
コロナ禍によってデジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速しました。DXはこれまでのIT化とは意味が異なり、デジタル技術の存在を前提として、既存の組織や仕組み、手順、モノや情報の流れといったものを根本的に変革することを意味しています。つまり、真の意味でのデジタルシフトが始まったということです。
このとき問題になることが、デジタルの世界での「誰であるか」の証明です。リアルの世界では誰であるかを、目で見て、話して確認することができます。しかしながら、デジタルの世界では誰であるかを簡単に証明することはできません。そこで、重要となってくるのが正確な認証基盤です。これが確実なものであってこそ、デジタル革命が社会全般に行き渡り、利便性と付加価値の高い世の中が実現することになると考えられます。
2021年の通常国会でデジタル改革関連法が成立し、デジタル庁の設置とともに、スマートフォンへのマイナンバーカード機能が実装されることが決まりました。これにより、2023年度から、公的個人認証機能サービスによる本人確認と署名がスマホで行えるようになり、社会全般にわたる利便性が飛躍的に向上することになります。
マイナンバーカードは2016年から交付されていますが、スマホ搭載は遅れておりました。これを可能にしたのが、情報セキュリティ大学院大学の大塚玲教授(当コンソーシアム理事)と私が開発したセキュリティモデルであり、これを同じく理事の松田学氏と協力して政府与党の関係要路に対して行った提案を契機に、2020年中から総務省の検討会で議論が進められ、その実現に向けて所要の法改正と予算措置が講じられることになりました。
スマホ搭載により、国が提供するアイデンティをデジタルの世界でシームレスに利用可能になります。当コンソーシアムは、政府とも連携しながら、自治体および民間側でのマイナンバーカード機能のユースケース拡大に寄与していくという役割を担います。
そのために、当コンソーシアムとしては、民間各業界や各企業、地方自治体、関係諸機関に幅広くご参画いただき、政府とも連携しながら所要の施策の実現を図ることを通じて、わが国のデジタル社会基盤の形成に向けて、そして、わが国が世界のデジタル革命を先導するポジションを築くために、ともに知恵を出し合い、力を合わせていきたいと考えておりますので、多くの方々のご参画をお待ちしております。
略歴
情報セキュリティ大学院大学 客員教授
株式会社Premo(東大CPUベンチャー) 代表取締役CEO / Founder
1996年東京工業大学工学部情報工学科卒業、2001年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。博士(工学)。株式会社インターネット総合研究所を経て、2002年株式会社情報技研を設立。2004年情報セキュリティ大学院大学 客員准教授、2015年同客員教授、2020年に新たにIoT時代を見据えたCPUベンチャーの株式会社Premoを東大内に共同設立。総務省マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する検討会 オブザーバー、総務省マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する技術WG 有識者。代表著書にインプレス刊「できるLinux」シリーズ。その他、技術系の著書多数(共著含む)。